Pseudoromance#12 (ページ6)

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「……当たり前だよ」

この時は、まだ。(人1)が抱える秘密に気付くこともなかったから。脳天気に分からないでいた俺への気持ちが確信できて。ただ浮かれていた。

(人1)の表情が、一段と曇っていたとも知らずに。

「立花(人1)さん、どうぞ」

誰も居ない待合室、そそくさと立ち上がった(人1)は。診察室へと誘導されるがまま入っていく。

だだっ広い待合室に、ふぅとため息をこぼし。退屈しのぎに目の前にある本棚へ目をやると、

「初めての育児、……乳児に必要な栄養素、……妊娠のメカニズム？」

ずらーっと並んだ本や絵本をペラペラと試しにめくってみても、面白みもなければ。興味もない。どことなく落ち着かない雰囲気が、妙にそわそわし始めた。

定期的に検査があるのなら、次の予約もとらないといけない。＿＿＿＿俺の休みは、……、

「チョンジョングクさん？」

「あ、はい！」

「診察室へどうぞ。」

「……え？！いや、俺は「折角居らしたのなら、ご覧になってみて下さい。成長はあっという間ですよ」

「……っへ」

何の事やら、意味がわからない。看護婦さんが「お忙しいとは思いますが奥様は大事な時期ですので、サポートしてあげて下さいね」と俺をさらに困惑させて。

どうぞ？と招かれた診察室へと入る羽目になった。

だけど、

「チョンジョングクさんですね？どうぞこちらへ。……、大丈夫ですか？＿＿＿＿初めて見たのなら仕方ないですね。＿＿＿＿ここが赤ちゃんの心臓、そして手と足。……うん。心配いりません、すくすくと大きくなってますよ。」

あまりにも想像と違う世界が広がっていた。

エコー写真を分かりやすく説明する医師は固まる俺に首を傾げて。(人1)の体に気安く触れる、

「悪阻は落ち着いてきましたか？」なんて聞きながらさ。

俺には全てが衝撃すぎて、そのイヤらしい手に嫌悪感を抱きながらも。そこまでの気持ちを持っていけない、

(人1)は(人1)で、俺に何の説明もなく。殺伐とした俺の気持ちを無視し続けるんだ。

・

・

「……ジョングクさん。あまり実感がわきませんよね？夫婦になって、そこに子供ができて。ごく自然のことなのに、いざ命の重さに怯んでしまうこともある。覚悟を持つのも大変な職業だと存じてます。｣

あまりにも俺が動揺を見せたからか(人1)の担当医に呼ばれて。唐突に二人きりで話をすることになった。