Pseudoromance#12 (ページ30)

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そこには血相を変えた、マネージャーと社長秘書。私に聞こえないようにか、そっと距離を置き秘書の手から書類を受け取った社長は。沈黙の中、さらっと目を通して。

「いつ？」

「明日には、もう…」

「……先手を打たれたか。どこから漏れたの？」

「分かりません。怨恨でしょうか？交渉の余地はない、と仰っています」

言葉にならない困惑を感じ取ったのだが。ボソボソと話してるその内容までは分からない。

ただ広報のお偉いさんまでもが、この会議室に集まった時。私は、そのまさかに気付いてしまったんだ。

「……社長、本日の18時。状況説明に来いとの連絡が。＿＿＿＿どうにかする術はあるでしょうか。」

「どうもこうも、…お互い納得のいく最善の策を話し合えるチャンスじゃない、受けて立つわ」

徐に私に視線が注がれ、ゆっくり近づいてくる社長。あえて書類は後ろに隠して。淡々とこう語った。「……(人1)さえ良ければ、もうさ。世間に隠すのは止めようか。」と、勝負師のような瞳で。

思わぬ迫力に頷いてしまう私。そして今から彼の会社へ出向かうとのことだが。あちら側の要望として当事者である私本人を連れてこいと言われているらしい。

そこにどんな思惑があるのか、不安は拭えないが。

｢(人1)は何も言わなくてもいい。結果がどう転ぼうと子供を一番に守ってあげなさい。私は、どうにかしてあんたの正義を守る」

社長や、社員皆は。私を励ますかのように。強気で居てくれた。それに、どれほど救われたか。

「ねぇ、(人1)。確認までに聞いておくけど、妊娠のこと。誰にも公言してないよね？」

戦場へと繰り出す道中、社長は何気なく私に投げかけたのだが。そんなの当然だと頷く寸前、思い留まった。

その表情の変化を見逃さない社長は。顔が曇っていく私に、「……誰に言ったの？」と催促してくる。

でも私は、信じたくなかった。まさか、信頼していた友人が記者に密告するなんて。そんなこと今日の今日でするとは思えないし、

「ねぇ、お願い。その人や(人1)を責めたりしないから。教えて」

あくまで参考までに、と言ってくれてるのは何一つ疑わずにいる私への優しさなのだろう。ただその優しさにさえ苛立ちを覚えて、

『………、ティアラ。……』

呟くその一瞬が重かった。