Pseudoromance#12 (ページ2)

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「……熱は？」

『……38.4』

「病院に行った？」

丁度タイミング良く測り終わった体温計。俺に渡してきては話すのも辛いのか小さく頷く。起き上がるのもしんどいのは目に見えて分かるが、体を起こしたまま項垂れるその姿。パジャマのチョイスが仇となって俺にやましい感情を湧き立ててくる。

久しぶりに会ったから尚、刺激が強い。恐らくノーブラの谷間にあえて視線を逸らしながら、(人1)の状況や近況を探ってみることにした。

「薬は飲んでる？」

『(首を横に振る)』

「ダメだよ。ちゃんと処方されたのなら飲まないと、＿＿＿＿何か食べた？」

『……何も食べられない』

「え？＿＿＿＿」

これは難題だな。リュックを下ろして早速。携帯片手に、高熱、食欲不振、食べれる物、と検索しながら。キッチンに立った。

(人1)を知りすぎてる社長さんでさえ分からないことが。俺に分かるのか。

暫く携帯と睨めっこして俺は、＿＿＿＿

「醤油……大さじ1、みりん……」

時折、味見を施しながらも完成に辿り着いた。初心者にしては、そこそこの出来栄えだろう。まぁ見た目は悪いけど栄養は抜群だし。

ただ(人1)の口には合うかが一番の心配所。

時刻は19時。夕飯時ではあるが、あれから一時間もかけてしまったか。ふぅと一息置いて。(人1)の様子を伺いにベッドルームへ顔を出すと、

俺を見るなり、だるい体を起こしてご飯を食べたいと言ってくれた。立ちあがった瞬間、思っていた以上にフラフラで手を貸そうと、その体を庇おうとしたのだが、

こんな時でさえ、(人1)は。『……大丈夫だから』と俺に甘えてくれない。

不意にでも触れさせてはくれない(人1)の本気には気付いていたでも、その辛そうな後ろ姿ただ見ているだけなのは。耐えられない。

でも、今は。頑なに目を瞑って我慢した。

『……、作ってくれたの？』

「…………うん。」

緊張の一瞬だ。表情が変わらない(人1)の前に熱々の小鍋を置いて。「熱いから、火傷しないようにね」小さく頷いたのを確認しつつ。じっと眺めていたかったけど、料理の片付けをそそくさと始める。

何も聞かず見ず。寂しい空間に漂った沈黙の中。食器を片付ける俺は。社長さんから聞いていた、一口口にした後すぐに吐いてしまう。それだけに最善の注意を払っていた。